通常23対で46個ある染色体が一個多く47個ある、それがダウン症です。

ほとんどが21番目の染色体が1個多い２１トリソミーと呼ばれるもので、希乃花もそうです。

遺伝的なものではなく、全く偶然に起こることで、約１０００人に１人生まれてくると言われています。

ダウン症児は心疾患などの合併症や知的発達の遅れが多くみられますが、現在の医療で十分に治療可能となってますし、早期の療育によりびっくりするほどの発達を示すことが確かめられるようになりました。４年制大学を卒業され活躍されている方もいます。ゆっくりですが確実に成長していきます。

身体的特徴としては丸い顔、切れあがった丸い目、決して高くないけれどかわいい鼻、少しつぶれたような耳などがあります。

２１番目の１本多い染色体にはやさしさが詰まってると言われている方もいるくらい、やさしくて明るいのが特徴で、音楽など芸術面が得意なことも多いようです。実際、プロダンサーの方もいます。

 

 

 

2006年10月8日。その日は樹の運動会。一緒に踊ったりして一日外で過ごしました。

夕方、なんかお腹が張るかんじはしたけど、気にせず夕食を食べに。

そして22時頃、「もしかして陣痛？」というようなお腹の痛みを感じました。でも、それまで便秘だった私。。。その痛みかも、便秘の痛みで病院行くのも恥ずかしいし・・・と1時間程我慢。

でもさすがに規則正しくやってくる痛みにこれは陣痛だろうと病院へ行くことにしました。すでに眠りについていた樹を近くに住む父に頼み、夫と30分程離れた病院へ。

もうすぐ着くという頃に猛烈な痛みが！

分娩室に入り、先生に診察してもらうと何と子宮口が全開で頭が見えてきてるとのこと。

 

実は私は樹を同じ病院で無痛分娩で出産していて、今回も無痛分娩を希望していました。が、麻酔なんてかけてるヒマはない。急遽自然分娩ということになりました。

「うそ〜っ！！！」

無痛と思っていて何の覚悟もできてない私に一気に恐怖が襲ってきました。しかも、お腹の子は心拍が下がってきてて私は酸素を吸いながらイキむ！

 

２３時１８分、親孝行なことに分娩台にのぼって10分程でスルリと出産。あまりの早さに夫はビデオを撮れず・・・。

「フギャー」という声と先生の「元気だよ」の一言に喜びが湧いてきました。そしてすぐに私の前に連れてこられた赤ちゃん。

「なんか黒っぽいな。こんなもんだっけ？」と思いながらも記念撮影。生まれた瞬間は病院が撮影してくれててCD-Rにしてくれました。

赤ちゃんは生まれてすぐの処置のために一旦私の胸から離されたのでした。

 

ここまではよくある出産シーン。

 

少し経って、先生が「酸素がうまく取り込めてないみたい。心臓に何か問題があるだろうからすぐに救急車でこども病院へ搬送します」と。。。

あまりに先生が淡々と普通に話すので「そうなのかー。でも大したことないよね。すぐ治るさ」と楽観的に考えました。外で救急車が止まる音が聞こえ、夫も赤ちゃんの後を追ってこども病院へ行きました。

 

こども病院についた夫は先生から説明を受けました。

診断は「低体重児」「多血症」「低血糖」「血小板減少」「動脈管開存」「心房中隔欠損」「肺高血圧」

 

「低体重児」 希乃花は３８週で生まれたにしては小さく２０４８ｇしかありませんでした。妊娠中からお腹が小さいことは気になっていたけど、検診では「少し小さめだけど問題までではない」と言われていたので安心していました。やっぱり小さかったんだね。

「多血症」「低血糖」「血小板減少」は一時的なもの。

「動脈管開存」「心房中隔欠損」 時間が経てば自然に閉じてくることが多いのですが、閉じなければ手術と言われました。

そしてここで一番やっかいなのが「肺高血圧」心臓に負担がかかるので、これが治らなければ長くはないと言われたそうです。

 

そして、後から聞いた話ですが、夫は生まれてすぐ先生に新生児室へ呼ばれました。そこにはまだ血がついたままの希乃花がいて、「チアノーゼが出ていて心臓に問題がある」ということ。そして「ダウン症の可能性があります」ということでした。

体温が下がるので体を拭くこともなく希乃花は救急車で運ばれました。

夫はその場で頭を抱え、私になんて言おうかとずっと考えていたそうです。「ダウン症」という言葉が重く心に圧し掛かり、こども病院の先生の話を聞きながら号泣したそうです。

 

出産後部屋に移り、私も楽観的に考えてはいましたがさすがに眠れず、夫からの連絡をずっと待っていました。

そして夜中の３時頃産婦人科に説明をしに戻ってきてくれました。

病院からの診断は何故か大丈夫だろうという気がして落ち着いて聞いていました。「ダウン症」ということもまだ“可能性”でしょ？と。

あまりに私が落ち着いて聞いているので夫はびっくりしたと後に言っていました。ただ、夫は私が落ち込まないように色々言ってないこともあったのです。

 

 

夫は仕事を１週間休みました。ちょうど出産のときに合わせて一週間休みを取るようにしていたのです。

 

産婦人科には当然ですが生まれたばかりの赤ちゃんを連れた人がたくさんいます。けれど私の赤ちゃんはそばにいない。他の人たちは母乳やミルクをあげるために新生児室へせっせと通っています。時には部屋から赤ちゃんの泣き声もしてきます。そんな状況で私はだんだんブルーになっていって、なるべく部屋から出ないようにしてひたすら希乃花に運ぶための母乳を搾ってました。そんな私を思って、夫は希乃花の写真を写真入れに入れて持ってきてくれました。

ちょうどそんな時、障害をもった主人公のドラマが始まりました。病室でみていると希乃花とダブり、涙が出てきました。夫も同じ気持ちで家で見ていて二人で電話で泣きました。

出産して３日目、入院している希乃花に面会に行きました。新生児集中治療室。たくさんの赤ちゃんがいます。その一角の保育器の中に希乃花がいました。裸でうつぶせになって寝ていた希乃花。小さい体全体で必死に呼吸をしてました。面会の２時間はあっという間。産婦人科へ戻る車の中ではまた涙があふれます。

 

そして、だんだん「ダウン症」かもしれない。いや絶対違う！特徴的な顔してないじゃない。あ、今の顔はダウン症ぽいな。先生が言うからにはかなりの確率でそうなんだろうな。いや、調べてみないとわからないじゃない。なんで？私が二人目が欲しくて、でも出来なくて不妊の治療したから？女の子が欲しいって思いすぎてバチがあたった？何か私悪いことした？世の中には悪いことしてる人いっぱいいるじゃない。なんであそこを歩いてる女の子は普通なのにうちは・・・。

希乃花は将来どうなるの？いじめにあうんじゃない？結婚できるの？私ダウン症の子を育てることできる？夢だった娘と買い物行ったり恋愛の話したりすることはできないの？みんな普通じゃない。なんでわたしだけ？

 

色々な思いが駆け巡り、突然泣けてきたり不安になったり・・・。

 

でも、希乃花に面会に行くとかわいい。愛おしい。

そんな精神的に不安定な日々でした。

 

そんな中、心房中隔欠損は2�o程あり、体重もまだ２１４４ｇと小さかったものの他の症状は治まり、入院12日目に退院となりました。

希乃花が退院してからは比較的安定しました。やはりずっとそばにいるとかわいくてしょうがない。

それでも、希乃花を妊娠中に亡くなった母に毎日「希乃花をダウン症にしないで。お願いします」と祈ってました。

 

 

そして運命の日。

検査結果を聞きに病院へ。

先生が結果を話す前に私も夫も机に置かれた紙の染色体の２１番目に目がいきました。

「あー、やっぱり３本ある。」

自分でも驚くほど落ち着いていました。

 

それからは逆にはっきりして不安になることはありませんでした。

 

正直、この一か月に色々ダウン症のことを調べて本も読んで、「本当にこの子が生まれてきてくれてよかった」「ダウン症の子はやさしくて明るい天使」などなど、“ダウン症だったからこそこんなにいいことがあった”ということが書いてあっても「そんなのきれい事。普通に生まれてきた方がいいに決まってるじゃない。言い方は悪いかもしれないけど負け惜しみみたいなもんだ」と思ってました。

 

それが結果が出て希乃花と過ごすうちに『希乃花はダウン症。だから何？染色体が１本多いだけ。他の子よりもゆっくりだけどちゃんと成長する。希乃花はこんなにかわいいし、ここにいてくれる。それだけでいいじゃない。』と心の底からそう思うようになりました。

 

これから色々あるかもしれません。でもそれは健常児でも同じこと。

そして普通だったらわからなかった事、気付かなかった事、気にもしなかった事を希乃花のおかげで知ることができましたし、これからもたくさん気づかせてくれる事と思います。私も希乃花と一緒にゆっくり成長できればいいなと思っています。

妊娠中は切迫流産になり、つわりで苦しみました。生まれてからは４度の入院。最初の入院は生まれてすぐ、後の３回は気管支炎や肺炎。ゼコゼコが続き本当に辛そうでした。入院は一番希乃花が苦しいだろうけど、私は病院に泊まり込みだし、樹にも随分我慢をさせました。

でも、家族や周りの友人の助けを借りながら希乃花も１歳になりました。体もだいぶ強くなったようです。色々なところに連れ出してます。(連れまわしてる？？)

ダウンの仲間もたくさんできました。ネット上で、あいあいセンターで、ダウンの集まりで・・・。何度も言うけど本当希乃花のおかげで色々な人と知り合うことができ、色々な事を知ることができ、感じることできて幸せです。まだまだ母親としても一人の人間としても未熟すぎますが、頑張って成長していきたいです！